「杏」 まっすぐと私の目を見た拓海は、優しい声で私の名前を呼んだ。 勇気づけるかのようにポンと頭に乗せられた手があたたかい。 「今日のお前、すっげー綺麗」 そして次に発せられたその言葉は、私にとびっきりの力をくれた。 「……もう、もっと早く言ってよ」 「悪りぃ。なんか照れくさくて」 「ふふっ、なにそれ」 思わず出そうになった涙を、グッと堪える。 「行ってくるね、拓海」 「おう」 拓海に笑顔を向けて、私は教室をあとにした。