おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~

「いったい何の用だ、エリック」

「アラン兄さまは本当に変わってしまったのですね。まずはその口調を直してください。
これからはアラン伯爵とエリック次期侯爵として話をしましょう。

私からの要望はひとつだけ。
リンネ王女にメイドをつけてください。王女にメイドがいないのはおかしいことですよね?
あらかじめここに滞在することは伝えていたにも関わらず、専属のメイドがいないのは伯爵が意図的に用意しなかったということですよね?」

ふたりの関係は今までと同じではないということをあえて強調し、エリックは強気に出た。

アランは現在当主であり、エリックはまだ当主ではないにしても貴族社会において家柄は何よりも重要視されるものであり、上位貴族に下位の貴族が反抗することなどできない…はずだった。

「親のすねをかじってのんびり暮らしているお前にはわからないだろうな。俺がどんなに大変な思いをしてここまで家を盛り上げてきたかなんて。

俺がこの家を継いだ時、それはもう本当に大変だった。父上は同じように頑張ってきたシャンドン伯爵だけ功績が認められ侯爵になったこと、それから1年もしないで母上が病で亡くなってからおかしくなった。

父上は毎夜賭博に明け暮れて家のお金はどんどん減っていった。お金を工面するためにも勝手に領地を手放して最終的に残ったのはスーラ村だけだった。あそこは何も採れない鉱山があるだけで土地も貧しかったから誰も欲しがらなかった。

賭博に負ければ借金が増え、その負けを忘れるかのように酒を浴びるように飲んで父上はあっけなく死んだ。

俺に残されたものは名前だけの伯爵とスーラ村、そして荒れ果てた家、ひとりのメイドだけだった。

他の使用人はお金が払えないとわかるとすぐにいなくなったのにメグだけはいつも支えてくれた。今もメグだけは信用できる。メグがいなかったら鉱山の件も考えつかなかったし、この家も今頃他の人の手に渡っていただろう。

すべてはお前の家が悪い。いつもいつもいい思いをするのはお前で、つらい思いをするのは俺だ。そうやって爵位を使って俺を苦しめるんだろう?

どうせ、今日来た理由だって俺が不正に人を買って鉱山で働かせているのを知ったからなんだろう?
わかっているさ。人身売買は絶対にやってはいけないことだってくらい。
罰は全部俺一人で受けるから、メグを引き取ってはくれないか…
メグは早いうちに両親を亡くして俺以外に頼れる人は誰もいない。俺がいなくなればメグは路頭に迷うことになるがそれだけは避けたい」