部屋に戻って国内統治に関する本を読んでしばらくしたあと、部屋のドアがノックされた。

「誰?」

もしも弟以外ならば本をしまわないといけなかったので、「どうぞ」という前に誰が訪ねて来たのかをたしかめる必要があった。

「クリスにございます」

弟が訪ねてきたということに確証がとれたリンネはクリスに対して中に入るように告げた。
リンネはクリスに椅子に座るように言ったあと、本に栞を挟み、テーブルの上に閉じて置いた。

「それで話って何かしら?」

「姉上、お願いがあります。
もしも自分が国王になったとき、国政を支えてください。
姉上が密かに勉強を続けているのはずっと知っていました。姉上のように男性にもひけをとらないくらい能力をもっているにも関わらず、女性だからという理由だけで影に隠れるのはもったいないです!

だから、どうかお願いします」

「クリス、私が国政に関わろうとしていることをお父様をはじめ、大臣達が嫌っているのを知っているでしょう?

あなたに今の国の状況を変えるだけの力があるの?
それに私はもうここを離れてエリック様のところに嫁ぐことが決まってるの」

リンネは本当なら「私の思いをわかってくれるのはクリスだけ」と言ってあげたいのだったが、今回の軽はずみな発言によって今後クリスが窮地に立たされることの無いように冷たく言うしかなかった。

「話は終わりよ、他に言いたいことがないなら出ていきなさい」

まだ何か言いたそうにしているクリスに対して、リンネは追い討ちをかけるかのように冷たく言い放った。
クリスはこのまま話を続けることはできないと判断したのか部屋を後にした。