全ての準備が整い、リンネはソファーに座りエリックが来るのを待っていた。

紅茶を飲みながらエリックが来るのを待っていると、半分くらい飲んだところで扉をノックする音が聞こえた。

「リンネ、入ってもいいか?」

リンネは外から声をかけてきたエリックの入室を許可すると、飲みかけの紅茶をテーブルに置いてエリックのもとに歩いていった。

マリアに下がるように言うと、その場で1周くるりとまわり、エリックにドレスを見せた。
リンネの着ていたドレスを見たエリックはにこやかにほほえんだ。

「ねぇ、早く出発しましょう?
もう、昨日からわくわくしてるの!」

早く出発したいとせがんだリンネだったが、飲みかけの紅茶は飲んだ方がいいと言われ、ちょっとふてくされながらも紅茶を飲みきった。

「それでは、視察にまいりましょうか?リンネ王女」

部屋にはリンネとエリックしかいないので、今回の本当の目的をエリックは主君に忠誠をかたっているもののように恭しく礼をした。
そう、今回はリンネとエリックの親睦を深めてくるが目的ではなく、城下町の視察が目的であった。
もちろん、そんなことを国王が許すはずもないのでこうしてエリックに頼んだのだった。

エリックはこのおてんば王女は自分が守ってあげないと何をするかわからないと思っているらしく、この頃はこうしたリンネのわがままを聞き入れたりしていた。
エリックも最初は女性であるリンネが視察に行ったりという国政に関わることを嫌がっていたが、この頃はリンネの国を少しでもよくしたいという信念に感銘を受けていて、たまに議会に出ることのできないリンネの変わりに発言したりしていた。

今回の視察は以前リンネとエリックが出会ったアッサム地域の現状を確認するためのものであった。
アッサム地域の現状をよくするためにはどうすればいいのかということをリンネはレース編みの傍ら必死に考えており、その意見を変わりにエリックが発言してと、少しずつ国王の知らないところでこの国を変えてきていた。
最近ではエリックの報告によると、アッサム地域に住んでいる人に職を斡旋したりと、少しでも人並みの生活ができるように国が支援しているとのことだった。

だがそれは紙面上の報告にすぎないので、本当はどうなっているのかを確認したいとリンネが言ったため、今回の視察がふたりの中で決定した。

視察に行くことが決定してからは、リンネとエリックでばれないように少しずつ準備を進めていたのだった。