翌朝、メグはまだ日も昇らぬうちから後宮で働いている使用人とともに仕事に励んでいた。

何時から試験開始という明確な時間の提示はなかったものの昨日より早くといわれたことに加え、普段ついている使用人が休みを取っているということを踏まえ早くから仕事についたのだった。

ここまで早くから仕事を始めている受験者はメグ以外にはいなく、その心意気が高く評価されていたということをメグはまだ知らなかった。

主人の身支度を整えることも使用人の大切な業務の一つであったのでメグはほかの主人についている使用人に尋ねクレアが何時ごろ起きるのかを確認した。

確認を終えまだ数時間ほど余裕があったのでメグは昨夜のうちの出されていたクレアのドレスを洗濯して時間をつぶした。

日もだいぶ昇ってきたころ、ついにクレアを起こす時間になった。

まだ起きていないだろうとわかっていながらもメグはクレアの部屋の前に立つと控えめにドアを二回たたいた。

まだ眠っているらしく中から返事がなかったのでメグは扉を開けクレアの寝ているベッドのそばまで歩いてきた。

「クレア様、おはようございます。
今日もいい天気ですよ」

クレアの肩を軽くたたきながら声をかけるとクレアはすぐに起きた。

眠たそうに目をこすっているクレアの体を起こすと目覚めのための紅茶を一杯注いだ。

「おはようございます。
目覚めの紅茶をお飲みください。
少し濃いめに紅茶を入れているのできっとすぐに眠気も吹き飛びます」

「ありがとう、いただくわ」

紅茶を口に入れるまでずっと眠そうにしていたが、一口口に入れるとあまりの苦さにクレアはすぐに目を覚ました。

「今日もあなたがいるってことは昨日無事に合格したのね。
今日も何か作ってほしいわ。
何を作るかはあなたに任せるから。

あっ、もちろん忙しかったら別に無理しなくていいから、今日パーティーが開かれるって聞いたからあなたも準備で忙しいだろうし」

「クレア様のご要望とあらば何でもおつくりいたします。
ただあまり手の込んだものは作れないかもしれないですが、3時のティータイムの際には何かお持ちいたします。

クレア様もご存じのようですが本日は後宮の親睦を深めるためのパーティーが夜開催されます。
詳細は私もまだ聞いていないのですが、そこまで大きなパーティーではないようです。
夕方5時ごろからこの部屋でパーティーの準備としてメイクなどをさせていただきます。
クレア様に化粧をするのは初めてですので、時間がかかってしまうかもしれませんがとびきり美しくなるように化粧させていただきます。

それまでの間、何かあれば部屋のベルをならしてください。
なるべく早くクレア様の部屋に伺いますので」

メグはクレアの身支度を整えた後、クレアの部屋を後にした。