今回メグが作ると決めたパイはプリンのパイとアップルパイだ。

生地の準備をし、リンゴをコンポートにしてそれからプリン液も作るというひとりで作るには少し時間がかかるものだったが、生地を休ませている間にコンポートを作り、コンポートを冷ましている間にプリン液を作り、プリン液の粗熱をとっている間にパイ生地を型に敷き詰めるというまったく無駄のない動きで準備を進めていった。

そしてパイを焼き窯で焼いている間に使った道具を洗い、もとあった場所に戻すとちょうどいい感じにパイが焼きあがった。

窯から出したばかりの熱いままでは運ぶことも切ることもできないので、少しだけ冷まし二切れずつ切り分けた。

粗熱が取れるくらいまでに冷ましている間に入れておいた紅茶を一緒にカートに載せるとメグはクレアの部屋へと戻っていった。

「クレア様、大変お待たせいたしました。こちらがご所望の甘いパイになります。

本日はプリンのパイとアップルパイを用意させていただきました。

申し訳ないのですが、先に毒が入っていないことを確認してもらってもいいですか?」

メグはクレアの前に並べたのと同じようにクレア専属の使用人と思われる女性の前にも2種類のパイと紅茶を置いた。

使用人はクレアとメグに一声かけるとパイを一口ずつ口に入れた。そして最後に紅茶を口に入れすべての毒見を終えた後、口を開いた。

「風味からして毒は入っていないように思います。また、銀食器にも黒ずみがないことから毒がないのは確かかと」

毒見が終わったのを確認してからクレアはアップルパイを一口食べ、そのあとプリンのパイを食べた。

気に入らなければ容赦なく床に落とすと脅されていたメグは落とされたらどうしようと心配しながら部屋の隅に控えていた。