リンネは3人が気絶しているのを確認すると、先ほどのフローレンス嬢から奪ったであろうブローチを取り返した。
この3人をどうすればいいのか悩んでいるところに、ひとりの男性が護衛を引き連れこちらへ向かってくる様子が見えた。

遠目から見る護衛の姿は騎士団の姿ではなかったので安心していたのだが、その感情はすぐに打ち砕かれた。

「これは全ておまえがやったのか?
名を名乗れ!場合によってはお前を捕まえて騎士団に引き渡すことになる」

見知らぬ男から上から目線で話をふられ、リンネは正直いらっとした。

「私の名前はリンネよ
この男はフローレンス嬢の馬車を襲い、彼女のブローチを奪ったから取り返したのよ!
あんたの名前は?」

リンネも負けじと威圧的にわざと語尾を強く言ったりしたのだが、あんまり意味はなかった。

「俺の名前は、エリック・ドゥ・シャンドン。
そんな綺麗なドレスを着たお嬢様が大人を3人も倒したってのを信用しろというのか?
お前は馬鹿か?そんな嘘を言うなんて?
もっとましな嘘をつけるようになりな。とりあえず、お前がこの現場にいたということは間違えようのない事実だ。
お前を騎士団に引き渡す」

高圧的な目の前の男の名前に驚きは隠せなかったが、エリックの護衛に連れていかれそうになるのをリンネは必死に拒んだ。
王宮にだけは行きたくないとその場に留まろうとするリンネに、エリックは「王宮にまでは行かない、騎士団の詰所に行くだけだ」と嫌みな笑顔を交えながら伝えた。

リンネにが王宮ないし騎士団の詰所に連行されるということは、少なからず国王に外に出ていたということがばれてしまい、怒られることは免れようのない事実だった。
どうにかして騎士団に引き渡されないようにする術はないのか考えていると、いい案が思いついた。