おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~

「遠いところよりご苦労様です。

私は国境警備隊の隊長を務めているアーサ・グロスという者です。

王女様がわざわざおいでになった理由は先程聞きました。
大変、申し訳ないのですが王女様がエルディール王国の方々を連れ戻すのは厳しいかと思われます…」

最初ははきはきと喋っていたアーサであったのに最後の方にいくにつれてその声はどんどん小さくなっていった。

「それはいったいどういうことですか?
もしかしてそこまでの記録は残っていないということですか?」

いったい何を言いたいのかわからなかったリンネは首を傾げながらアーサに質問した。

するとアーサは1枚の紙を引き出しの机から取りだしリンネたちに見せた。

「彼女たちがどこに行ったのかはわかっています。
まあ、もしかしたら既にそこにはいないかもしれませんが…

あまりに多くの若い女性が国に入国しようとしていたので、いつもよりも詳しく聞いたら、連れと思われる男性がこう言っていたので…
『久々に上物が沢山手に入った。いつも通り皇太子様に差し出せばたんまりお金が手にはいる』

女性たちはこの国に、皇太子様の後宮にいると思います。
エルディール王国が人身売買を禁止していることはもちろん知っていますが、サハール皇国では禁止はしていません。

だから、わかっていても入国を認めないわけにはいかなかった」

悔しそうに唇を噛みながら話をしているアーサを見て、リンネはもどかしい気持ちでいっぱいだった。

サハール皇国に来る前から皇太子の後宮にいるかもしれないという情報は手にしていたが、一縷の望みをかけて違うことを願っていたのに、その願いは儚く消え去ってしまった。