ことの始まりは一本の電話だった。
 「あら、透子ちゃんが?」
 いつものように長電話をしている義母から出てきた言葉は昔の友達の名だった。
 「ちょっと、…………ちゃん?」
 いつの間に電話を切った義母は私に問いかけた。
 その名前で呼ばないでよ。
 それは口の中で噛み砕き、何、とだけ答える。
 「10歳の時友達だった、透子ちゃん。病気にかかったらしいの」
 何でそれをあんたが知ってんだ。
 またそれを噛み砕いて、ふうん、という。