1 アルカリ性の血と、光の温度 


 「なんで私が」
 ぽつりと口の中で小さく言った。
 30度という暑さで、アルファストに陽炎が見える。おかげで持っていた地図が書いてあるノートの切れ端もぐちゃぐちゃだ。
 「なんで私が」
 もう一度言った。
 誰でもそう思うのではないだろうか。
 私は今から、余命宣告を受けた6年前の友達に会いに行くのだ。