それから簡単な片付けをして料理教室は解散。
最後までワイワイ楽しく、和やかな時間だった。

広瀬くんが帰ると言うので、私も一緒に玄関まで出る。
外はもう日が傾き、西の空が色を変え始めていた。

「広瀬くん、道わかる?駅まで送ろうかー?」
「あはは、大丈夫だよ。じゃあ、今日は本当にありがとう」
「うん。お父さんも言ってたけど、また良かったら来てね!歓迎するから」
「ああ。ぜひ」

広瀬くんがうなずく。
するとそれに答えるかのようにサアッと風が吹き、彼の髪をゆらした。
それは今日の晴天に不釣り合いな冷たい風。
思わず身体が小さく震えた。

「……ん、寒くなってきたね。それじゃあ日下部さん。風邪ひくといけないし、もう中に入りなよ」

広瀬くんはそう言って背を向けて去ろうとする。
これで本当にもうお別れだ。
……といってもまたすぐ学校で会えるのに。
なぜかものすごくさみしい。

「あ、あのっ、広瀬くん」

気づけば声をかけて引き留めていた。