「……日下部さん。

僕、ずっと君のこと……」

「……っ」

こ、これって。本当にあれ!?

まさかまさか自分の身に少女漫画なことが起こるなんて。

17年間、ほぼほぼ食べることばかり考えて生きてきたというのに。

しかも相手が広瀬くんだなんて。

「……ひ、広瀬くん」

ああ。

広瀬くんって、本当にきれいな顔してる。

眼鏡ごしの瞳から目が離せない。

気づけば、胸が早鐘のよう。

聞いたことのないリズムを打つ。

放課後の喧騒が別世界みたいに遠くて、自分の鼓動しか聞こえない。

人気《ひとけ》のない下足場に、西日がゆっくり差し込んでいく。

光が私と広瀬くんを等しく照らした。

まるで……広瀬くんと世界に二人だけ。

「日下部さんのこと……すごく美味しそうにご飯を食べるなって思ってたんだ」

………。

「え?」

「よかったら、今度僕と一緒に昼食を食べない?」

「え?え?え?」

……え?