「大丈夫?日下部さん、どこか痛くない?」

ぶつかっていったのは私なのに、広瀬くんはとても優しく気遣ってくれる。

メガネの奥の澄んだ瞳が私を映していた。

それだけのことがなぜだかとてもこそばゆい。

これって広瀬くんがカッコいいから……?

それだけなんだろうか。

「……日下部さん?」

「あ、ご、ごめんー!大丈夫だよ。全然平気!私こそ本当にごめんね。デザートなに食べようかな~とか考えてたらボーッとしちゃってたよー」

「そっか」

安心したように表情をゆるめる広瀬くん。

その笑顔を見ていると、またむずむずしてきて落ち着かない。

「で、デザートといえばっ、広瀬くんは学食のデザートなにが好き?」

落ち着かなくて、そわそわして

ついそんなことを話しかけてしまっていた。

「デザート……。軽食コーナーで売っている甘いメニューのことだよね」

口許に手をあて考え込むしぐさを見せる。

軽い雑談のつもりだったけれど、真面目な広瀬くんは真剣に答えようとしているみたいだ。