僕は怖かったです。逃げ出したかったです。
生徒でも、僕が敵う相手ではないと分かりました。もともと暴力なんてしませんから、僕が純を助けに行こうとしたところで無理なのです。
でも、苦しんでいる純を助けたくて、ごめんと言いたくて。僕は今にも駆けだしそうになりながら、地面から離れられずにいたのです。
足が動きません。目が逸らせません。自分が同じ目に遭うんじゃないかと思うと、怖くて怖くて気分が悪くなりました。
視界が揺れます。
月光が、ぼんやりと視界全体を照らします。
それから間もなく、純は解放されました。
咳き込むことも吐き出すこともしないで、項垂れて壁にもたれて、ずるずるとアスファルトに沈んでいきました。



