そんな僕に、純は物語を聞かせるようにゆったりとした口調で言うのです。
「不安だらけだよね、でもそんな恋だっていいじゃない。別に誰が誰を好きになっちゃいけないなんてルールもない。珍しいかもしれないけど間違いじゃない。
ね、わたし達は自由なんだよ。
わたしはもう高校二年生なの。子供だけどちょっとは大人なの。
だから先生が何て言おうと、わたしはわたしがしたいようにする。
振り向いてくれないなら振り向かせる。
駄目って言うなら説得する。
先生はどうするの?
わたしはこの先、私が好きになってしまった一人をずうっと愛していくよ」
吐いた白い息が震えました。
顔が冷たい。濡れて冷たい。
行き場を無くした手のひらに、小さな雪がどんどん吸い込まれていく。
ああ。
......。
純はもうとっくに、これから先の未来を。自分の幸せを考えていました。
取り残されていたのは僕だけです。心配しなくても良かった。
純はもう、ひとりじゃなにも出来ない子供なんかじゃなかったのです。



