でも、心のどこかで期待していたのかもしれません。
あなたのせいではないと、言われたかったのかもしれません。
「ないと思います」
純の唇からそんな言葉がはじき出されたとき、心の中には絶望して膝をついた自分がいました。
けれど純は、別に「忘れたい」と言った僕を否定していたわけではなかったのです。
「忘れたいくらい痛い思いをしたから、その分手に入れられたものもあったでしょう? そうやって、人生には【見えない取引】がいくつもあるんです」
「【見えない取引】......」
「厄介だけど、その【取引】に何を言っても何も変わりません。見えないんですからね。だから、受け入れて前に進むしかない」



