ビルの中に足を踏み入れると、ヒヤリと冷たい空気が頬を撫でた。


あたしはゴクリと唾を飲み込んで様子を伺う。


入ってすぐの場所には小さな受付があるが、そこには誰もいなかった。


少ない人数で経営しているのがわかる。


受付の奥にはエレベーターが見えた。


どこに達治の両親がいるかわからないから、1階ずつ調べて行く必要がありそうだ。


そう思った時だった。


「俺のためにお弁当をゴミ箱へ捨ててきてよ」


達治のくぐもった声が聞こえてきてあたしたち4人は立ち止まった。


くぐもった今の声は誰かの鞄の中から聞こえたもので間違いなかった。


雅美が青ざめた顔で鞄からスマホを取り出す。


画面を確認すると、片手にロープを持ったキャラクターが映し出されていた。