いきなりチヒロの両親について質問するのは、違和感があって教えてくれないかもしれない。


「実はうちのクラスで、友達の両親について調べる授業があってさぁ」


そう言ったのは香菜美だった。


かなり無理があるけれど、いつまでも黙り込んでいるよりはマシだった。


「なにそれ?」


「道徳の授業なの。それで、チヒロの両親について色々質問したかったんだけど、本人はいないし、でも次の時間に提出だし、どうしようかと思って」


あたしは怪しまれる前に早口でそう言い切った。


心臓はバクバクとうるさい。


「チヒロ、最近休憩時間の度に教室出て行っちゃうんだよねぇ。あたしでわかる範囲なら教えても大丈夫だと思うけど」


真衣ちゃんに教えているくらいだから、あたしに教えても大丈夫だと思ってくれたようだ。


あたしはホッと胸をなで下ろした。