あたしが出かけることに母親は反対だったが、香菜美が一緒にいると言う事で渋々納得してくれた。


あたしの頬には大きなガーゼが貼られていて、見ているだけで痛々しいみたいだ。


記憶を辿りながら歩いていると、見覚えのある川が現れた。


「確かこの川を真っ直ぐ上流へ行ったところだったと思う」


だんだん蘇って来た記憶に、徐々に歩調は速くなっていく。


歩けば歩くほどカサブタになっている太ももの傷が痛痒くなり、掻き毟ってしまいたい衝動に駆られた。


「ここだ……」


青い屋根の小さな家の前で立ちどまり、あたしはそう呟いた。


家の玄関ドアにはポストがあり、それにも見覚えがあった。


間違いなく達治が暮らしていた家だった。