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放課後、あたしはぼんやりと机に座ったままだった。


早く帰らないと母親に怒られるとわかっているのに、なかなか動くことができなかった。


「優奈、大丈夫?」


帰る準備を終えた香菜美が近づいてきた。


「うん……」


曖昧に頷き、手に持っていたスマホへ視線を落とした。


今はバッテリーを入れていて、ゲームが起動されている状態だった。


画面の中の恭介は無表情で、特に命令もしてきていない。


「ずっと考えてたら、なんだか思い出すような気がしたんだよね」


「思い出す?」


あたしの言葉に香菜美は首ををかしげた。


「うん。チヒロの言う通りあたしは何かを忘れてるのだとしたら、それはなんだろうって考えてたの」


「なにか思い出した?」


そう聞かれて、あたしは視線を恭介に落とした。