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「ちょっと優奈、急にどうしたの?」


男子生徒を追いかけてたどり着いた先は図書室だった。


「待っててって、言ったのに」


追い掛けて来た香菜美もあたしも、息が切れていた。


香菜美へ事情を説明することなく、あたしは図書室のドアを開けた。


昼休憩時間ということで、10人ほどの生徒たちが思い思いに本に囲まれて過ごしている。


教室や廊下の喧騒から離れて、とても静かな空間だった。


図書室の中を見回してみると、カウンターの中にさっきの男子生徒の姿を見つめた。


あたしは真っ直ぐカウンターへ向かう。


「貸出ですか?」


男子生徒は手元を見たままそう言った。


「話がしたいんだけど」


そう言うと、男子生徒はようやく顔をあげた。


あたしの顔を見つめて首をかしげている。


ゲームセンターで少し会っただけだから、顔を忘れているのだろう。