ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています

翌日の昼頃。

レオンは僅かな従者と共に帝都に向けて出発をした。

リラには朝の食事の席で、仕事でしばらく留守にすると伝えていた。

そのときは「わかった」と物分かりよく返事をしたリラだったけれど、見送りのとき悲しくなったのか泣き出してしまって大変だった。

レオンは後ろ髪ひかれる様子で、馬上から何度も振り返っていた。私はどこまでも追いかけて行きそうなリラを抱っこして見送った。



レオンの居なくなった日々は、まるで色を無くしたように寂しいものだった。

リラもときどき、ぼんやりと窓の外を眺めていた。

レオンの帰りを待っているのかもしれない。

「リラ、おやつにしようか」

声をかけると、リラはゆっくりと振り返った。

「うん」

おやつと言えばいつも嬉しそうに駆け寄ってくるのに、今日はなんだか元気がないように見えた。

「どうしたの? どこか痛い?」

「いたくない」

「……レオンが居なくてさみしい?」

そう問えば、リラはこくんと頷いた。

「うん、さみしい。レオンいつかえってくるの?」

「お仕事が終わったらよ」

「レオンのおしごとってなに?」

リラは私を真っすぐ見つめて言う。

「……みんなの暮らしを良くしたり、悪い人が来たら守ったり。いろいろあるのよ」

今までだったら上手く話題を変えて誤魔化していたけれど、嘘を言いたくなかった。

「おしごとたくさん、たいへんだね」

リラは感心したように目を丸くする。

「そうだね、さあ、おやつにしよう。今日はケーキがあるの」

クリームのたっぷり乗ったケーキを見せると、リラは頬を赤く染めた。

「わあーおいしそう」

フォークを手に、嬉しそうに食べ始める。

しばらくすると、フォークを置いて言った。

「クッキーもたべたいな」

「あ、そう言えばカサンドラに来てから食べてなかったね」

今度、焼いてあげようかな。

「うん……ねえママ」

「なあに?」

「はやく、レオンにあいたいな」

ケーキを食べながらも、レオンのことを忘れていなかったようだ。

「ママもあいたいでしょう?」

リラはこてんと首を傾げる。

「……そうだね」

リラと一緒だ。私も会いたいと思ってる。四年、離れていたときより私は弱くなってしまったみたいだ。