「大丈夫か?」

私は小さく頷き答える。

「普段は夜中に起きたりしないんだけど、環境が変わったせいで過敏になっているのだと思うわ」

「そうか……物怖じしないように見えるがまだ幼子なんだよな」

「うん。考えてみればほんの少し前までは赤ちゃんだったのだものね」

まだ目を離してはいけないんだ。

「そうだな」

「私、このままリラに付いている」

レオンと話し合わなくてはいけないことは沢山あるけれど、今はリラの側を離れたくない。

その気持ちを察してくれたのか、レオンも承知してくれた。

「俺は向こうの寝室を使う。何か有ったらすぐに呼んでくれ」

「うん……ありがとう」

「当たり前のことだ。さっきも言っただろ?」

レオンは囁きながら屈みこみ、私の頬にそっと口づけた。

「おやすみ」

「……おやすみなさい」

部屋の灯りが消えていて良かった。

レオンに触れられた途端に、私の頬は熱を持ってしまっていたから。

扉が閉まると私はひっそりと息を吐いた。

まだ鼓動が落ち着かない。

レオンと抱き合った時の熱がまだ身体に燻っている。

二度と戻らないと固く決心したはずなのに、彼に触れられるとそれは瞬く間に崩れてしまう。

なんて意思が弱いのだろうと情けなくなるけれど抗えない。

あのときリラの泣く声がしなかったら、きっともっと先に進んでいた。

それくらいレオンとのキスは切なくて、それでいて心も身体も満たされた。

もっと触れ合いたいと、離れたくないと切に願った。

私は今だにレオンが大好きなんだ。

本能に流されてしまったら傷つくのは自分だと分かっているのに、この気持ちは止められない。

レオンに迫られると自制が利かない。そんな私を正気に戻すのはリラの存在だ。

「……ママ」

可愛らしい声が聞こえて来る。寝言を言っているみたいだ。どんな夢を見ているんだろう……。

薄暗闇の中、リラの銀の髪が淡く輝く。そっと触れて優しく撫でる。

どんなにレオンを求めていても、私はこの子のことを一番に考えなくては。

そう改めて心に刻んだ。