「でもあの頃とは違う。レオンはもう私とは違う立場の人になってしまったわ」

「立場が変わっても俺の気持ちは変わっていない……イリス」

力強い声で名を呼ばれ私は応えるように顔を上げる。

すると彼の手が私の頬に触れ、あっと思うよりも早く唇を塞がれた。

「……!」

驚き直ぐに離れようとしたけれど、それよりも早く抱きしめられ身動きが取れなくなる。

何度も角度を変えては触れ合い、声を出す事もままならなかった。

触れ合うだけだった唇はやがて更に深い口づけに移っていった。

レオンの舌が強引に押し入って来る。けれどその頃の私にはもう抵抗する気持ちなんて僅かにも残っていなかった。

耳を擽る少し掠れた声、匂い、鼓動。全てが離れても忘れられない程大好きな人のものなのだ。

逞しい腕に包まれそれらを感じたら、理性を保ってなんていられない。

こんなのはいけないと思いながらも、本能に流されて彼を受け入れたくなっていく。

どれくらいの時間、唇を合わせていたのか分からない。

だけど、レオンの身体が離れたとき、私は指先まで震えるような熱に冒されもう彼のこと以外は考えられなくなっていた。

「イリス、愛している」

レオンの甘やかで切ない声が耳に届く。

私は夢見心地で彼の言葉に頷いていた。けれど、

そのままソファーの上に押し倒され、再びキスが交わそうとしたその時、高い鳴き声が聞こえて来て、私は身体を強張らせた。