ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています

「彼女とは幼馴染で昨日久しぶりに再会した。誤解がないように言ってくがあなたの店を領主家が贔屓にしていることには何の関係もない」

「そうなんですか……幼馴染」

セルジュはそう呟くと私に視線を向けた。

「リース、本当なのか?」

「ええ」

躊躇いなく答えると、セルジュは感心したように呟いた。

「信じられないような偶然だな……」

「私も驚きました」

「リースに貴族の幼馴染が居たなんて驚いたよ……」

セルジュはかなり困惑している様子だった。けれど思い出したようにリラの寝室に視線を向けた。

「リラの検査は、王都の病院でするのだろう? 王都には俺の親類が住んで居るから連絡をしておこうか?」

彼はこんな状況でもリラを気遣ってくれている。

「気にしてくれてありがとうございます。でも王都ではなくラヴァンディエの病院に行くことになったんです」

「ラヴァンディエ帝国?」

セルジュは驚いた様子で眉を上げる。

「ええ、ターナー先生の紹介で。ラヴァンディエはこのティオール王国より医療が発達しているし、先生の後輩が居るそうです」

「そうか……でも心配だな。ラヴァンディエは他国だし、馬車で行っても時間がかかる所だから」

「あ、それは……」

私が答えようとするより早く、今度はレオンが早口で割り込んで来た。

「ラヴァンディエには俺が付きそうので心配は要らない」

「あなたが? でも……いや、分りました。あなたは腕が立ちそうだから道中安心ですね」

セルジュは笑顔を浮かべそう言うと、落ち着いたら連絡を寄越して欲しいと言い残して帰って行った。