ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています

「無理です」

「なぜ?」

「それは……」

上手く言葉が返せないでいると、レオンの纏う空気が冷ややかになった。

「セルジュ・ドニエと付き合っているからか?」

不機嫌な彼から発せられたその言葉に、私は驚き顔を上げた。

「え?まさか……何を言っているのですか?」

レオンはどうしてそんな発想になったのだろう。

店での私達はいつも通りの店主と従業員としての態度だったし、疑われるような行動は何もなかったはずだ。

けれどレオンは不快そうに眉間にシワを寄せて低く呟いた。

「彼はイリスをとても気にかけていた。ただの従業員に向ける気遣い以上のものだと感じたし、イリスも彼に気を許しているように見えた。ラヴァンディエに帰らないと言うのはそれが原因なんじゃないか?」

「ち、違います! セルジュとはそんな関係じゃないです。確かに気を遣って貰ってはいるけどあくまで雇い主と従業員の関係です」

セルジュが私を気にかけるのは、彼の優しい生格からだ。

ひとりでリラを育てている私を、とても心配してくれている。

何かと助けては貰っているけれど、決して特別な関係なんかじゃないのに

「本当か?」

「はい、誓って言えます」

私の心は昔と変わらずレオンにあるのだから。

レオンは納得した様子ではないながらも態度を和らげ、再び私を問い詰めて来た。