ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています

「なんとか無事終わったな」

セルジュはほっとしたように言うと自分の手で肩を揉んだ。緊張して力が入っていたのだろう。

「レオンさんは凄く迫力のある人だったな、目が合うと怖いくらいだったよ。さすが領主家の使者だけあるよな」

「……はい」

本当のことを言えるはずもないので、頷く。

「リースの仕事の終了時間を聞いていたけど、ふたりでいるとき何か有った?」

伺うようなセルジュの視線にドキリとした。何とか冷静さを装って「いいえ」と答える。
すると彼は首を傾げた。

「レオンさんの様子がなんだかおかしく思えたんだ。初対面のはずのリースをやけに気にしているように見えたし」

「……気のせいかと思いますけど」

何もかも見透かされるような居心地の悪さを感じて、私は目を逸らした。

「もしかしたらレオンさんは、リースを見初めたのかもしれないな」

「まさか! 有り得ないです」

「そ、そう? ごめん、俺の気のせいだな」

セルジュはむきになって否定する私に少し驚いたようにしながらも、いつもの仕事に戻って行った。

その後は心が落ち着かないながらも、もくもくと仕事をした。

ここ最近は在宅での仕事で対応していたので、店でしか出来ない仕事が滞っている状態だった。
せっかく出て来たのだから出来る限り片付けてすっきりしたい。

リラが心配だけれど、何か有れば連絡を貰えるように叔母に頼んであるし大丈夫だよね?

集中して仕事をこなしていると、あっと言う間に時間が過ぎて行った。