医師の診断結果を伝えると、お父さまとお母さまは酷く動揺した。

当然だ。私とレオンが想い合っているのには気付いていても、そこまで関係が進んでいるとは思っていなかったはずだから。

私とレオンが抱き合ったのはたった一晩。お父様とお母さまが不在の日のことだった。

初めはそんなつもりは無かったけれど、お互い好きな気持ちが抑えられなくなって事に至ったのだ。

とても幸せだったし、レオンに初めてを捧げたのを後悔はしていない。

だけど、もしお腹の子がラヴァンディエ皇帝の血筋だと誰かに知られたら大変なことになる。危険が迫るかもしれない。

かと言って私に産む以外の選択肢は無かった。

医師に妊娠を告げられたあとそう時間を置かずに、私はレオンに知らせず子供を産む決心をした。

本当はもう一度彼に会いたい。

でももう会えない。これから生まれる子とレオンとの関係を誰にも疑われる訳にはいかないのだから。

私の産む決意を知った両親は最後まで反対した。

「産み月からレオン様の子だと疑われる恐れがある。残念だけど子供は諦めなさい」

「だからルメールを出て産むの。ラヴァンディエ帝国からも出るわ。誰も知らないところに行く」

「馬鹿を言うな。お前がひとりで生活して行ける訳がないだろう?」

「出来なくてもやるわ。秘密は絶対に守ってみせる。お父さまにもお母さまにも迷惑はかけないしレオンに連絡を取ろうともしないから……産まれてくる子を必ず守るから」

目を閉じると別れ際のレオンの辛そうな表情が思い浮かぶ。

消し炭になった森と、打ちひしがれた村人の顔も。

あんな辛い思いを産まれて来る子にさせるわけにはいかない。

皇家の争いになんて関わらずに、穏やかで幸せな人生を送って欲しい。

その為には何でもすると覚悟を決めてから私は泣くのを辞めて、ひたすら準備を進めて行った。

私の決意が揺らがないのを見て両親は諦めたようだった。私と生まれて来る子が少しでも安全になるようにと、出来る範囲で手を尽くしてくれた。

一月後の肌寒い秋の早朝、私は両親だけに見送られ生まれ育ったルメール村を旅立った。