夜が更けても涙が止まらなかった。胸が痛くて心が苦しい。

それでも少しずつ心が落ち着いて来ていたのだろう。泣き疲れてぼんやりした頭に浮かび上がった景色があった。

兵士たちに踏み荒らされた村に、焼けた森。
もう二度と目にしたくない光景が。

生まれ育った大切なルメール村が虐げられていたとき、私は何も出来なかった。

突然やって来た彼らの無慈悲な行動に怒りは感じていても、実際はただ震えて見ていただけだった。

私には何の力もない。

レオンに危機が迫っていると言う今も役に立てていない。

でも彼と婚約すると言う公爵家の姫には、大きな力があるのだろう。

私と公爵家の姫。どちらがレオンの為になるのか考えるまでもない。

ソフィア様の仰る通り、私が身を引くことこそがレオンの未来への道を拓くのだ。。

頭でそう分かっていても心が追い付かなくて、了承の返事を出す決断を下せず涙にくれる日々を送っていたある日、私は自分の身体の異変に気がついた。