ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています

しばらくすると赤い服の兵士が私の所にもやって来た。

「ルメール男爵のご息女、イリス嬢ですね」

兵士の厳しい目付きが恐ろしかった。私は震える声で答える。

「はい」

「レオン皇子の行方について何か知りませんか?」

「いえ……」

そう答えたけれど、兵士は疑わしそうな目で私を睨む。

「あなたは皇子と年も近いし、親しい間柄であったのではないのですか?」

「いえ……」

「ならばなぜ先ほどから震えているのですか?」

追及に耐えられず思わず目を逸らすと、お母さまが私を庇うように前に出た。

「イリスは本当に何も知りません。こんな風に突然大勢の兵士が押し寄せて来たら誰だって怖くて震えてしまいますわ」

兵士は私をじっと見つめていた。無言の圧力をひしひしと感じる時間は苦痛だったが、しばらくすると諦めてくれたようだった。

「どうやら何も知らないようですね。ですが当面外部との連絡は控えて貰います。ルメール男爵家はレオン皇子が長く過ごした家というだけでなくガディオ伯爵家の分家筋にあたります。レオン皇子の関係者から連絡が入る可能性が有りますので」

「はい、承知しましたわ」

お母さまが従順に答えると、兵士は踵を返し広間を出て行った。けれど私の恐怖心はなかなか消えることはなかった。