ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています

優しい記憶の夢から不意に覚醒して目が覚めた。

目を開くと私は薄暗闇の中に居た。

瞬きをして目を慣らすと、部屋の様子が分る。

と同時に私が横になっているのはレオンのベッドだということを思い出した。

そうだ。私はここでレオンと……一気に顔が熱くなる。

身体に残っているレオンの感覚に、頬を染めていた私は、遠くから聞こえる泣き声にはっとした。

これはリラの声だ。思っていた通り、目が覚めてしまったんだ。

ベッドから起きて足元に綺麗にたたんであった服を身に付ける。

それから直ぐに部屋を出てリラの下に向かう。

するとそこには既にレオンが居て、泣くリラを戸惑った様子であやしていた。

「レオン」

声をかけると彼はほっとした表情を浮かべる。

リラを引き取り、抱っこしながらあやししばらくすると、落ち着いたのか穏やかな眠りについた。

どうやら完全に起きた訳ではなく、半分眠っている状態だったようだ。

ゆっくりとリラをベッドに戻し、上掛けをかける。安定した寝息を確認してからレオンに目で合図を送り部屋を出た。

「寝るときはイリスじゃないと駄目みたいだな」

レオンは少し寂しそうに言う。

「そんなことないよ。レオンも慣れたら大丈夫。だってリラはレオンのこと大好きだって言ってたもの」

レオンは切れ長の目を開く。

「本当か?」

「本当よ。子供は自分へ愛情を向けてくれる人とそうでない人を敏感に感じ取るの。レオンの愛情はちゃんと伝わってるいてリラもそれに応えているのだと思う」

「そうか……」

レオンは嬉しそうに微笑み私の肩を抱き寄せた。

「身体は大丈夫か?」

「あ、うん……少し怠いけど」

恥ずかしさを感じながら答えたのに、レオンはますます私を困らせるようなことを言う。

「ごめん、イリスがあまりに可愛いから抑えがきかなかった」

私の顔はきっと真っ赤になっている。

それを誤魔化すようにレオンから顔をそむけた。

「今、何時かな?」

外の様子を伺うふりで離れようとしたのに、レオンが腰に手を伸ばし引き寄せて来た。

「朝までまだ時間がある。もう少し休もう」

妙に色気の籠った声で言われて腰が砕けそうになった。

このままレオンの腕に再び身を任せたくなる。

けれど私は理性を総動員して、レオンから離れた。

「今日はリラの側についているわ。また起きるかもしれないし」

レオンはがっかりしたように眉を下げたけれど、リラの部屋の扉に目を向けると優しい表情になった。

「そうだな。起きたときイリスが居れば安心するだろう。ふたりでゆっくりはまた今度の機会に楽しみに取っておこう」

次は朝まで離さない。そう耳元で囁かれ、頭が沸騰してしまった私は、もう何も言えなくなった。