オリーヴィア様が今どこにいるのか、私は知らない。

だけど、予想はついていた。

カサンドラは大きな都市だけれど、公爵家の令嬢が滞在するとしたら一か所しかない。

町一番の高級宿「カサンドラ亭」だ。

私は整備された石畳の通りを必死に走り、カサンドラ亭の華やかな装飾の施された受付カウンターにたどり着いた。

「あの、すみません、こちらに貴族の若い女性が宿泊していると思うのですが……」

受付の女性が不審そうな目を向けて来た。

「宿泊されているお客様の情報はお教え出来ませんが」

「でも、急ぎの用が有るんです。私はカサンドラ病院に滞在しているものです。病院に確認して貰えれば身分を証明できます」

「ではせめて部屋名はお分かりでしょうか?」

部屋名? そんなの分からない。考えてみれば未だここに滞在しているとも限らない。

「……部屋名は分かりませんが、ラヴァンディエ帝国貴族の女性で……」

「お答えしかねます」

受付の女性は私を不審そうに眺めながら、冷ややかに言った。

もう話を聞いてくれる気配はなかった。

勢いで来てしまったせいで、何の策もなかった私が悪いのだけれど、オリーヴィア様に会うことも叶わないなんて……。

他にリラの手がかりなんて無さそうなのに。どうすればいいの?

焦燥感に苛まれていたそのとき、慌ただしい足音が聞こえて来た。