「どうした、急に」

「ん……早く一緒にお酒が飲みたいなと思って」


〝ひとりの女として見てもらいたいし、あなたに釣り合う女になりたいから〟という理由は胸の中に留め、当たり障りのない文句を口にした。

尚くんは、純粋にその言葉を受け取ったらしい。


「ああ、そうだな。まあ酒が飲めたら飲めたで、別の心配も出てくるんだが」


同意したものの、苦笑を浮かべてなにやら危惧している。

別の心配……って、お酒の席で男の人と一緒になったときのことを言っているんだよね、きっと。相変わらず過保護だなぁ。

そんなに心配しなくても、尚くん以外の男の人についていったり、ほだされるようなことには絶対ならないのに。というか、これではいつまで経っても自立できない気がする。

少々呆れに似た気持ちで、またひと口カフェオレを飲み、独り言のように呟く。


「……大人にはあと一歩だけど、もう子供ではないよ」


十九歳という微妙な年齢と、兄妹同然の関係に、悶々とジレンマを抱いてばかりだ。

閉じたパソコンをぼんやり眺めていると、隣から落ち着いた声が投げかけられる。