「ここの配色をもう少し変えたらさらに見やすくなると思う。三田線ブルーとか0075c2あたりに。フォントをゲーム風にPixelMplusにするのも面白そうだし」

「んっ?」


具体的なカラーコードや聞いたことのないフォントの名前を口にされ、私は目が点になった。一瞬フリーズしたあと、慌てて見本帳を広げる。

そういえば、尚くんって色見本帳やカラーIDは頭にインプットされているし、フォントのこだわりもオタク並みなんだった。

街を歩いていて、気になるフォントを見つけると書体を調べだすこともあれば、見ただけで特定してしまうこともある。ちょっと恐いよ……と思うくらい詳しいのだ。

今言われたものを必死に探す私を見下ろし、尚くんはクスッと笑う。


「キョウがこんなふうにしてると、一丁前にOLみたいだな」


〝大きくなったな〟とでも言いたげな口ぶりに、お父さんか、とやっぱりツッコミたくなる。この関係からはなかなか抜けられそうにない。

微妙な笑みを浮かべていると、ポンと肩に手を置かれた。


「なにか飲み物でも買ってきてやるよ。コーヒーでいいか?」

「あ、大丈夫だよ。もう終わったから」