出勤時間はほぼ同じにもかかわらず、私たちの関係を悟られないために私は電車で、尚くんは車でネージュ・バリエに向かった。
学校まではごくたまに車で送迎してもらうこともあるが、甘えてばかりいたくないので、基本は自分で移動するようにしている。心配性の尚くんは送迎したいみたいだけれど。
皆で日課の掃除をした今、中途で入ってきたデザイナーさんの紹介が行われている。ミーティングテーブルの誕生日席の前で、尚くんの隣に立つのがその人だ。
チョコレート色のやや長めなマッシュヘア、中性的な顔立ちで人懐っこそうな男性が、私たちに向かって頭を下げる。
「はじめまして。冴木 柊斗(さえき しゅうと)です」
可愛い系イケメンの冴木さんは、アヒルのように口角を上げて挨拶をした。とても愛想がよく、モードな私服もバッチリ着こなしていてオシャレな印象だ。
「これまで広告代理店で働いていたらしいから、頼もしい仲間になってくれることを期待してる。皆、よろしくな」
尚くんは冴木さんの肩を軽くぽんと叩いて皆に声を投げかけ、私たちは快い返事をした。



