「おーい、遅刻するよ~!」

「んんー……ったく……」


尚くんは乱れた髪がかかる綺麗な顔を迷惑そうに歪め、うっすらと瞳を開けた。やっと起き上がるかと思いきや、彼の手がこちらに伸びてきて私の腕を引っ張る。

なんとそのままベッドへと引き込まれ、私は抱き枕になったかのごとくホールドされた。


「ひゃあ!? なにして……っ!」

「うるさい目覚ましを止めるだけ」


眠そうな掠れた声が頭の上で響き、頬をくっつけた胸は穏やかな呼吸を感じる。〝うるさい目覚まし〟呼ばわりされているのにドキドキが止まらなくて、朝から心臓に悪い。

でも、尚くんの腕の中はとても心地よくて、私までこうしていたくなる。簡単に黙らされちゃったけど、まあ起きてくれたならいっか。


「ぐー……」

「寝るな!」


安堵した途端に再び寝息が聞こえてきたので、私は慌てて上体を起こし、彼の身体を揺するのを再開した。

まったくこの人は、私がどれだけ翻弄されていると思っているのか。……それも愛おしいから、結局許してしまうのだけど。