〝女として見てもらう〟という目標が、また遠退いちゃったかな。

今の私は、ただ一緒にいたいという理由でプロポーズを受け入れたあのときとは違う。まだ一年足らずだけど、これでも成長したんだよ。

同じ会社で働き始めて、尚くんの仕事のことも、社会の厳しさも少しずつわかってきた。

それに、ふたりで生活しているうちに痛いほど自覚した。ずっと前から、私はあなたに恋をしていたんだって。

だから、いきなりでびっくりしただけで、子供の話だって本当は嬉しい。将来は尚くんと、世間一般と同じ幸せな家庭を築いていきたいから。

そんな、愛に溢れた未来が、いつか私たちにも訪れるんだろうか。

ぼんやりと考えながら、甘辛く煮た豚の角煮をお皿に盛ってダイニングテーブルに運ぶと、さっき私が見ていた花火大会のチラシを眺める尚くんの姿に気づいた。

彼もこちらに目線を移し、柔らかな笑みを浮かべる。


「花火、今年はふたりで見に行こうな」


当たり前のように口にされたひとことで、胸がふわりと温かくなった。

……あの日、花火の音を聞いて思った〝この人と一緒に見たい〟という願いは、望み通り叶えられそうだ。それがどれだけ、幸せなことか。

あの夜に感じた気持ちと、今ある幸せを改めて噛みしめ、私は明るい笑顔で「うん」と頷いた。