早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜

眉根を寄せる私を見て若干怯んだ彼は、バツが悪そうに頭を掻き、歯切れがよくない声を返してくる。


「いや、もし悪いとこがあったら見せたくねぇなと思ってて、そのまま忘れてたんだ」

「見てください、今」

「……はい」


仏頂面をしたまま食い気味で返すと、彼は調理台に突いた手を離して素直に返事をした。いい歳した大人なのに、私に弱い彼はちょっと子供っぽくて可愛いから憎めない。

なんて思ってしまう自分は何様なのだ。……あ、奥様か。

彼の妻としての自覚を持とうとしている反面、まだお隣さんだった頃の感覚が抜けないので、ふいに自分が妻だということを忘れてしまうときがある。

やっぱり私たちは、〝夫婦〟と呼ぶには未熟なんだよなぁ……。

内心情けなくなりつつも、私はリビングに向かい、バッグの中に入れっぱなしだった封筒を取り出した。それを持ってキッチンに戻り、尚くんが開けるのを隣で見守る。


「おぉ、どこも異常なし。優秀じゃねーか」


ざっと目を通した彼が自分に感心したように言うので、用紙を受け取ってよくよく見てみる。評価の欄には意外にもAが並んでいて、私は目を丸くした。