満たされた気持ちで夜空を見上げ、その向こうの天国にいる母に想いを馳せる。

今夜の花火も見えた? 私は過去最高に綺麗に見えたような気がするんだ。

お母さんが私と尚くんを引き合わせてくれたんだよね。それも感謝していることのひとつだよ。

心の中で語りかけていたとき、後ろから人が歩いてくる気配がしたかと思うと、背中からぎゅっと抱きしめられた。


「杏華」


低く甘い声が鼓膜を揺すり、一瞬にして身体が火照りだす。ついさっきの愛し合った余韻は、まだまだ抜けていない。

心臓の音がトクトクと少し速まるのを感じつつ、彼を軽く振り返る。


「ごめん、起こしちゃった?」

「いや。俺が起きてるとお前が寝れないかと思って、目閉じてただけ」


なんだ、眠っていなかったのか。本当に優しい気遣いをしてくれる旦那様だ。


「今日はなぜか眠くならないんだよ。お前を抱けて興奮してんのかな」

「……実は私も」


お互いに正直なことを言い、目を見合わせてクスッと笑った。抱き合ったあとの恥ずかしさもあって、ちょっぴりくすぐったい。