「行きたくない……ここにいたい。ずっと、尚くんのそばにいたい……」


心に溜まっていた想いをそのまま言葉にして、はたと気づく。

あれ、そういえば私、熱があって帰ってきたんだっけ。身体が動かないのはそのせいで、声を出しづらいのは喉が荒れているせいか。

というか、なんで私、泣きそうになりながらバカ正直なことを言っているんだろう。

記憶を巻き戻している最中、尚くんは驚いたのか目を開いて私をじっと見つめる。そして、憂いの表情の中にどこか安堵したような色を滲ませた。


「それは俺のセリフだ」


口調が丸くなったかと思うと、私の背中と膝の裏に両腕を回され、軽々と抱き上げられる。

されるがまま寝室に運ばれ、ベッドにそっと下ろされた。尚くんに触れられたことと、マットの柔らかさのおかげで安心に包まれる。

彼はいまだ心配そうに私の顔を覗き、頬に手を当てて「本当に大丈夫か?」と気遣ってくれる。

まだ怠くてぼうっとするけれど、病院に行くほどではなさそうなので、こくりと頷いて微笑んだ。

大きくなってから熱を出すと、こんなにつらいものなんだ。あんなところで寝てしまったのは、ここ最近ずっと寝不足だったせいもあるだろうけど。