未和子は険しくなっていた表情を一時だけ和らげ、期待がこもった瞳で俺を見つめる。


「じゃあ……」

「SHINDOUの広告、俺たちにやらせてくれ。必ずいいものにする」


自信を持って宣言すると、彼女は安堵したように口元を緩め、「……ありがとう」と言った。

そしてため息を吐き出し、寂しそうに微笑む。


「面倒くさがりで大雑把なあなたが、執着するのは仕事だけだと思ってたのに、こんなに一途になる女の子がいたなんてね……。ほんと、呆れたわ」


力なく嘲る未和子には、諦めの色が滲んでいるように見えた。

彼女の想いに応えることはできないが、仕事では精一杯向き合うことができる。そうやって少しずつ、新しい関係を築いていけたらと思う。

未和子は気持ちを切り替えるように、背筋を伸ばしてひとつ息を吸い込み、さっぱりとした口調で言う。


「急いでるところ、引き止めてごめんね。その勢いで、早く愛しのキョウちゃんと恋人になったら?」


少々投げやりにも感じるひと声が投げられ、俺はふっと笑いをこぼした。


「なれたらいいんだけどな。とりあえず、プロポーズしてくる」

「はいはい、プロポーズでもなんでもどうぞお好きに……ぷっ、プロポーズ!?」