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初めて会ったときの杏華は、まだまだ無邪気な子供で、父親がいないにもかかわらず、いつも笑顔を絶やさない明るい子だった。

彼女を取り巻く小学生の中では、とびきり可愛かったと思う。もちろん、この頃の俺にはそれ以外の感情はなかったと断言する。

あいつからしてみたら、俺なんかオジサンに見えてるんだろうな、と常々思っていたのに、まさかここまで懐くようになるとは。


いつの間にか家族同然になっていて、勉強頑張ってるかなとか、このお菓子をあげたら喜びそうだなとか、ふとしたときに杏華のことを考えている自分がいた。

俺には男兄弟しかいないから、妹への憧れみたいなものもあったのかもしれない。

杏華はただの妹的な存在で、そう思っていなければいけない──。と、自分に言い聞かせ始めたのは、いつからだっただろうか。


彼女が中学生から高校生になり、少女から女性へと変化していくのが手に取るようにわかった。

笑顔は相変わらず無邪気だったが、時々かいま見せる大人びた顔だったり、ドラマかなにかで感動してこぼした涙だったり。

彼女の表情がとても美しく見えて、目が離せなくなるときが増えた。