抑揚を無理に抑えたような声で言われ、私は「うん。じゃあね」と返すだけで精一杯だった。

通話終了のボタンをタップし、糸が切れた人形のようにだらりと手を下げる。

ああ、終わるんだ。尚くんと過ごす、幸せな時間が。


「ふっ……う、あぁぁ……!」


我慢していた声を上げて、子供みたいに泣きじゃくった。やっぱり私は、未和子さんのような凛々しい女性にはなれない。


泣きすぎたのか、熱のせいか、頭がさらにぼうっとしてきて、ぱたりと倒れ込むようにフローリングに怠い身体を横たえる。

もう病院に行く気力はなく、なにもかもどうでもよくなってくる。

うつろな瞳で荒い呼吸をする私の頭に浮かぶのは、花火大会のときの鬼頭さんの言葉。


『好きな人にはいつも笑顔でいてもらいたいし、そうできるように努力したいです』


……尚くんに心から笑顔でいてもらうためには、これでいいんだ。だから、後悔はしない。

彼と過ごしてきた日々を、まるで走馬灯のように脳内再生しながら、私はいつの間にか重い瞼を閉じていた。