七月も半ばに差しかかった今日は、梅雨が明けたのだろうか、朝からさんさんと暑い日差しが降り注いでいる。

世間一般の出勤時間よりもやや遅めの九時三十分、私は横浜駅から徒歩十分の、オフィス街に佇む七階建てのビルに足を踏み入れた。

一階は落ち着いた雰囲気のカフェがあり、毎度香ばしい香りの誘惑に負けそうになりながら五階に向かっている。

普段は専門学生で、バイトでここに通っている身分の私なので一応我慢しているけれど、コーヒーをテイクアウトして出社するのはちょっと憧れる。


五階に着き、〝ネージュ・バリエ〟とフランス語で書かれたプレートがついたドアを開ければ、明るく清潔感のある白を基調とした内装のオフィスが広がる。

壁も窓枠も白く、洗練された雰囲気のその空間に、木製のテーブルや棚、観葉植物がナチュラルな色を添えている。

このビルの外壁は焦げ茶色で、私たちのオフィスはこの通り真っ白。まるでチョコレートでコーティングされたアイスクリームみたいだな、なんてよく思う。

今日は、出社したのは私が初の一番乗り。オフィスの鍵は個人別に暗証番号を発行するシステムのため、バイトでも開けることができるのだ。