次いで、彼女はパッと逆を向き、冴木さんにも臆することなくきっぱりと言う。


「冴木さんも。あなたについては、普段からそう感じていました。あなたも、ありのままでいていいんです」


彼が驚いたように目を見開いた。多少の無理をして愛想よく振る舞っていることに、まさか鬼頭さんが気づいているとは思わなかったのだろう。

自分を偽らない彼女に言われると、とても説得力がある。きっと冴木さんも、少しだけ心が軽くなったことだろう。

ところが、鬼頭さんはゆっくりと目線を下げていく。


「でも、やっぱり……好きな人にはいつも笑顔でいてもらいたいし、そうできるように努力したいです」


純粋な想いを口にする彼女の儚げな横顔が、私の目にはとても美しく映った。そして、その気持ちにも深く共感する。

私も冴木さんも、それぞれ想いを巡らせて、「そうですね」と頷いた。

私の頭の中には、ブライダルフェアに連れて行ってもらったときのワンシーンが蘇る。


『いかなる道も共に歩み、一生笑顔でいることを誓いますか?』


あのときの言葉を、彼も今の私たちのように思って言ってくれていたなら、どれだけいいだろう。

再び見上げた光で彩られる夜空は、フィルターがかかったみたいにぼやけていた。