早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜

私は首を傾げ、ビルの中へと進む。他に行く当てもないし、とりあえず寄ってみよう。

オフィスの前に着き、ドアをノックすると「はい」と声が聞こえた。ゆっくり開けてみれば、窓際のワークスペースに座るひとりの男性の姿がある。


「冴木さん!?」


驚きの声を上げると、彼も目を丸くして勢いよく腰を上げた。


「キョウちゃん! どうしたの?」

「冴木さんこそ」


私と同じく瞠目している彼だが、ノートパソコンと窓を交互に指差して説明する。


「俺は仕事しがてら花火を見に。『ここ、意外とよく見えるんだよ』って加々美さんが言ってたから」

「そうなんですか! じゃあ、ちょうどよかった。時間潰したかったので」


花火は諦めていたけど、ここなら落ち着いて見られそう。

表情を緩める私のもとへ、冴木さんはゆっくりと歩きながら、怪訝そうに問いかける。


「好きな人と花火見に行くんじゃなかったの?」


……ああ、そういえば冴木さんも知っているんだった。変なごまかしはできそうにないな。


「その予定だったんですけど、ワケあって私がドタキャンしちゃいました。それで、ひとりぶらぶらしてたら、ちょうどここの明かりが見えたので」