早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜

『ごめん、これからバイト仲間とご飯食べに行くことになってて』

「あーそっか。こっちこそ急にごめんね」


そりゃ予定があるよね、と残念な笑いをこぼす私。瑠莉は『久礼さんと花火見る約束だったんでしょ? なにかあったの?』と、心配そうな声で問いかけてきた。

まだ時間があるようなので、信号が変わるのを待ちながら、昨日の未和子さんとのことから、かいつまんで話した。

納得したらしい瑠莉が、電話の向こうでゆっくり頷いているのが想像できる。


『それで私を利用したわけね。私の名前の使用料は高くつくわよ』

「瑠莉様、そこをなんとか……」


彼女が茶化すから、こちらもノッてしまう。でも笑ったら、さっきまでの重苦しい気分がいくらか軽くなった。

それもつかの間、瑠莉は意外だという調子で言う。


『あれだけ楽しみにしてた花火大会なのに、あんたが自分からドタキャンするとは思わなかった』

「本当なら見たかったよ。でも……いろいろ考えちゃって、苦しくなるだけなんだよ」


弱気な声を漏らし、ぐっと手を握った。

尚くんと一緒にいるのが苦しいと思う日が来るなどとは、微塵も予期していなかった。どれもこれも、彼を好きなせいなのだが。