少し外を歩いたあと、冷を求めてショッピングビルの中に入り、カフェでひと休みすることになった。

が、そこへ向かう途中のアパレルショップで、ワンピースに目を惹かれる。パステルチェック柄の、フレアスカートが可愛いデザインのものだ。

直感でいいなと思い、立ち止まってそれを手に取り眺めていると、尚くんが隣にやってきた。


「いいね、そのワンピース。似合うよ」

「んー、でもこんなに高いのは無理」


値札にはゼロが四つついている。私のバイト代でこれを買うのは、だいぶ勇気がいる金額だ。

すぐに諦めてポールに戻そうとしたのだが、尚くんはそれを制した。そしてスタッフを呼び、さらりと告げる。


「これください」

「え、ちょっと!?」


ギョッとして咄嗟に尚くんの腕を掴むと、彼は呆れたような顔で私を見下ろす。


「お前、俺が社長だってこと忘れてるだろ。これでも結構稼いでんだぞ」

「それはわかってるけど……」


もちろん、尚くんはハイスペックな人だと承知している。このくらい、ワケなく払えるだろう。ただ、私が貧乏性なだけなのだ。

どうしても申し訳ない気持ちになる私に、彼はいたずらっぽく口角を上げて言う。


「可愛い嫁にプレゼントしてなにが悪い」