あれは確か、尚くんと出会って一年が過ぎた、小学六年生の冬のこと。

母が仕事で留守にしている間、私の面倒を見てくれていた尚くんが、ショッピングモールに連れ出してくれたときのことだ。


『わあ、この指輪可愛い!』


キラキラとまばゆい光を放つショーケースに引き寄せられ、私はその中に上品に並べられたリングに釘づけになった。

一方、ちょうどメールを打っていた尚くんの目線は、携帯に向いたまま。


『女の子は好きだよなぁ、おもちゃの指輪とかブレスレットとか……って、本物じゃねーか!』


どうやら私が見ているのはおもちゃだと思っていたらしく、驚いてこちらを二度見していた。まあ、小学生だったし無理もない。

私はこの頃からオシャレに目覚め始め、大人のマネをして綺麗な指輪も嵌めてみたかったのだ。

エンゲージリングが輝くショーケースを覗き込む女子小学生と男子大学生の姿を、あのときの店員さんはどんな目で見ていただろうか。


『いいなー、お花の形』

『キョウはそういうのが好きなのか。でも、これはまだお前には早すぎる。アレにしとけ』