尚くんも、未和子さんと再会したことで、恋人だった頃の気持ちがぶり返すかもしれない。彼女が別れを切り出した本当の理由を知れば、なおさら。

その可能性を考えると、胸が押し潰されそうになる。

ふたりの障害となっていた進藤社長はもういない。もうひとつの障害は、この私だ。

私が、彼のもとから去らないと──。

心の奥底にくすぶっていた不安が一気に膨らむ。気の利いた言葉がなにも出てこない私に、未和子さんは明るくなった声を投げかける。


「本当に全部吐き出してごめんね。あなたいい人オーラが漂ってるから、つい口が軽くなっちゃった」


茶目っ気のある笑顔を見せる彼女に、私は小さく首を横に振る。


「おかげで自分の気持ちが整理できたわ。あの人のこと、今でも好きなんだってはっきりわかった。ありがとう、野々宮さん」


私が嫉妬の対象だったとは知らずに、彼女は清々しくお礼を言った。私は強い罪悪感と不安を抱きながらも、なんとか笑顔を返す。

それからの食事は、まったく味を感じることができなかった。